街は少しずつ朝の色に染まり始めていた。


茫然としたままだったあたしは、半ば無理やりに道明さんによって車に乗せられる。


そして連れられた場所は、隣町にある中央病院。


駐車場には場違いな黒塗りの車が止まっていて、それから降りてきたタカはこちらに駆け寄ってきた。


彼が傷ひとつなく無事だったことさえ、今は喜んでなんていられない。


タカと道明さんはひそひそと何かを話した後で、



「しっかりしろよ、リサ!」


肩を揺すられたが、そこから自分自身を形成しているものが壊れてしまいそうになる。


白い巨塔を見上げ、身震いした。



「早く行くぞ!」


けれど腕を引かれても、足は動かない。


嫌だと首を振るが、それでも彼らによって病院内へと連れ込まれた。


静かすぎる廊下を足早に歩き、その先に見えたのは、“手術中”と灯されたひとつの扉。


どういうことなのかわからずにいると、ふたりはそこまでで足を止める。



「やべぇな。」


タカの言葉の後、背後から聞こえてきた足音に振り向いた。


見慣れない男がふたり、あたしの方に向かって歩を進めてくる。



「すいません、警察のものです。」


それを聞き、タカと道明さんは「俺ら向こうに行ってるから。」と、逃げるようにきびすを返した。


警察の人たちは、そんな彼らを一瞬怪訝そうな目で見るが、



「あなた、被害者のご家族か何かですか?」