「…春樹のこと、知ってるの?」


「いや、俺は何度か顔合わせた程度だから、知ってるってほどでもねぇんだけど。」


「………」


「んでも、タカも無茶するよなぁ。
まぁ、気持ちもわかるけど、冬柴さんの怖さは半端じゃねぇのによ。」


冷たすぎる無機質な部屋に馴染んでいる道明さんの目は、ひどく寂しそうなもの。


だから彼はよくタカの家に足を運んでいたのではないかと思ってしまう。



「タカ、帰ってくるよね?」


「そんなことは俺にだって断言出来ねぇよ。
だってアイツが最優先に望んでるのは、リサちゃんが無事でいることなんだから。」


ストレートに言うのは道明さんらしい。


けれど、せめてこんな時くらいは、気休めの言葉がほしいものだ。


顔を俯かせるあたしを真っ直ぐに見た彼は、



「あのな、わかってるだろうし、言うけどさ。」


良くも悪くも、道明さんは言葉なんて選ばない。



「俺は組の人間だから、それが命令なら、タカのことだって殺さなきゃならねぇ。」


「………」


「けど、そうならねぇようにはするつもりだから。」


安心しろ、なんてことは言ってくれない。


それでも道明さんは険しい顔なんてしていなかったから、今は十分だ。


あたしは手の震えを止めようと、鳴りもしない携帯を握り締めた。


神様でも仏様でも良いからと、こんな時ばかりは祈ってしまう。


夜はまだ明けないね。