あれはタカが悪いわけじゃないし、痛みだけならそのうち消える。


疼く肩口を押さえ、大丈夫だよ、とあたしは言った。



「これくらい平気だから。」


少し前ならあたしが春樹を庇うだなんて考えられなかった。


けれど今は、あの子が無事にこの街を出て、生きててくれることだけを祈っている。


タカは携帯を取り出した。



「冬柴さん、俺です。
いえ、春樹の情報はまだ掴めてませんけど、カメラは見つけました。」


これから一旦そっちに戻ります、と彼は言う。



「はい、はい、…わかりました。」


電話を切り、あたしに向き直ったタカは、



「リサ、念のために当分は家に近付くなよ。」


自宅に戻れば、あたしが春樹の姉であると誰かにバレる可能性があるから危険だ、ということか。


悲しいけれど、それは仕方のないことだ。


頷くあたしを確認したタカは、再び携帯を手にし、



「道明くん、ちょっと話があるから、今すぐ会えねぇ?
違う、そうじゃなくて、電話じゃ無理だから、あぁ、そっち行くわ。」


手短にだけそれを伝え、彼はあたしを立ち上がらせる。



「行くぞ、リサ。」


考える暇もなくホテルを出て、タカの車に乗せられた。


彼は猛スピードでそれを走らせ、夜の闇に染まった中を抜けていく。


運転するタカの瞳はただ真っ直ぐに正面を見据え、まるでそれは死ぬことの覚悟のようにも見えた。