タカを制しようとしたが、逆に揉み合いになり、腕を払おうとした彼の手に当たって、あたしは衝撃と共に吹き飛んだ。


そして運悪くローテーブルに肩口を強打し、痛みで喋ることもままならなくなる。


けれど、そんな場合じゃない。



「リサ!」

「姉貴!」


ふたりは焦ったように駆け寄ってくるが、



「春樹、早く!」


あたしは再び声を絞った。


タカはまるで自分がしてしまったことをまだ理解出来ていないような様子で茫然とするが、春樹はあたしを見てから彼を見て、顔を覆うようにして俯いた。


そしてその場にうずくまる。



「もう良いよ、姉貴が俺を庇う必要なんてねぇ。」


「………」


「第一、元々は俺が今まで築いてきた人間関係が原因なんだから。」


春樹はエンペラーに入らず、真っ当に生きてれば、こんなビデオカメラを手にすることだってなかっただろう。


けど、でも、もうこれ以上誰かを恨むべきじゃない。


だってアンタはまだやり直せるんだから。



「…頼むから早く逃げてっ…!」


必死で春樹の体を揺するけれど、でも彼は動こうとはしてくれなかった。


代わりにタカが膝から崩れ落ちる。



「どうしてこんなことになるんだよ!」


悲痛なまでに絞り出した声。


あたしはただ、涙が溢れたが、それが零れ落ちないようにと唇を噛み締めた。