コンコン、とドアをノックする音が聞こえ、緊張が走った。


春樹を部屋の奥に隠して恐る恐るそれを開けると、佇んでいるのはタカだけだった。



「大丈夫、気付かれてねぇから。」


早口に言って彼は室内へと入り、そこに見つけた春樹と対峙した。


あたしはタカと目を合わせることも出来ず、春樹を庇うようにその間に立ち、



「春樹に何かするつもりなら、あたしが許さない。」


「姉貴!」


けれどタカは、



「カメラはどこだ?」


その瞳は、まるで仕事中のように冷たいもの。


春樹は足元に投げていたバッグを一瞥し、視線に気づいたタカはそれを拾い上げる。


ビデオを5秒ほど再生させて中身を確認した彼に、あたしは、



「ねぇ、もう良いでしょ?」


それは懇願に近かったのかもしれない。


けれどタカは唇を噛み締め、



「春樹のこと連れて行かねぇと。」


と、押し殺したような声で言った。


瞬間、考えるより先にあたしの体は動いていた。



「逃げて、春樹!」