本当にこの選択が正しかったのかなんて、わからない。


けれど最初から、あたし達だけで抱えきれる問題ではないから。



「さっきの、雷帝さんだろ?」


春樹は不安そうな顔で、通話を終了させたあたしをうかがう。



「電話、何だって?」


「とりあえず今からここ来るって言ってたし、何とかするって。」


さすがに、組の連中が血眼になってアンタのこと探してるよ、とは言えるはずもない。


けれど春樹だってそこまで馬鹿じゃないから、先ほどのあたし達の会話で何かを察したに違いない。



「なぁ、俺どうなるんだ?」


問うてくる声は震えていた。


でもここであたしが余計なことを言って声を荒げれば、逆に彼の不安を煽るだけだ。


心配しなくて大丈夫だから、と返すだけで、煙草を咥えるようにして会話を止めた。


春樹だけじゃなく、一歩間違えばあたしだってどうなるか、だ。



「ねぇ、春樹。」


でも死ぬことは怖くなんてないから。



「もしもの話だけど、何かヤバくなった場合は、迷わずあたしを置いて逃げなさい。」


「…何、言って…」


「ビデオカメラも捨てて、逃げるのよ。
ふたりよりひとりの方が良いし、アンタだけなら何とかなるから。」


これ以上誰かを失うことに比べたら、あたしが身代わりになる方がマシだ。


第一、春樹は未来を望んでいる。


ならば小さな頃から助けられてばかりだった“姉”のあたしにだって、こんな時くらい出来ることはあるんだから。


大丈夫、もう覚悟は決まってるよ。