横にいる春樹はあたしの腕を掴み、また少し顔を青くしている。


タカには相変わらず沈黙しか返せずにいると、



『じゃあひとつだけ聞くけど、春樹が持ってるビデオカメラの中身、…観たのか?』


もうそこまで知ってしまっているんだね。



『観たんだな?』


もう一度、強く問われた。


あたしは覚悟を決め、ぐっと唇を噛み締める。



「春樹をどうするつもりなの?」


今度は電話口の向こうが一瞬沈黙し、



『とりあえずお前ら今、どこだ?』


答えではない問いだ。


言いたくない、と首を振ると、タカは舌打ち混じりにため息を吐き出した。



『なぁ、リサ。
俺は出来るならお前を巻き込みたくはねぇし、春樹のことだって穏便に済ませてやるつもりなんだ。』


「………」


『ただ、冬柴さんを筆頭に、組の連中が血眼になって捜してる。』


じゃあ甲斐くん達はどうなったの?


なんてことは、怖くなって聞けなかった。



『誰にも言うつもりなんかねぇから、頼むからそこがどこだか教えてくれ。』


「…そんな、こと…」


『俺がどうにかするから、信じろよ。』


本当に、春樹を守ることが出来るのだろうか。


震える息を吐き、あたしは言葉を手繰り寄せた。



「K町のオリエントってラブホの、413号室。」