こんな時間にこんな場所に呼びつけ、運転手は若い男女であるあたし達を不審そうな目で見ていたが、気にしてられない。


急いでホテル街の方へ、と言い、春樹は車外からは見えにくいように、出来るだけ頭を下げさせた。


それから数分走り、到着したひとつのホテルの前で運転手にお金を押しつけ、あたしは春樹の腕を引く。


どこの部屋でも良いからと逃げ込むように入り、ドアを閉めると、やっと少し安堵出来た。


だからって、問題が解決したわけではないのだけれど。



「とりあえず、今街に出るのは危険だし、せめて朝になるまではここにいよう。」


息をついたあたしに彼は、



「どうして何もしてない俺が身を隠さなきゃならないんだよ!」


「仕方がないじゃない!
もしものこと考えなさいよ、堂々としてれば良いってことじゃないんだから!」


「けど!」


けども何もない。


無言で睨み返すと、春樹は急に視線を落とす。



「俺、また姉貴のこと巻き込んじまったんだな。」


「それは良いから、アンタはシャワーでも浴びて頭冷やしてきなさいよ。」


あぁ、と言った彼が風呂場へきびすを返そうとした瞬間、あたしの携帯が着信のメロディーを響かせた。


タカからだ。


出るべきかどうかと思案したが、でも下手に心配させるのもはばかられる。


あたしは少し緊張しながらも通話ボタンに親指を乗せた。



『リサ、ちょっと良いか?』


「うん、どうしたの?」


なるべく平静で聞いたのに、