春樹はあたしの言葉に驚きのあまり、目を見開いて絶句した。


彼も画質の荒いそれでは、さすがにそこまではわからなかったに違いない。



「…そん、な…」


じゃあ警察に、なんて簡単な話でない。


もしかしたらもう他の子に何かが及んでいる可能性だってあるし、だとするなら、春樹の命だって危なくなる。


タカには言えない。


彼がどう動いているかわからない以上、容易く相談なんかしたら、どこで人に知られるかもわからないのだから。



「これ、捨てよう!
カメラ壊したら映像は消えるし、そしたら…」


思い付いたように早口に言った春樹に、



「そんなことで終わる問題じゃないでしょ!」


相手はヤクザだし、何より内容が内容だ。


とにかく春樹をここじゃないどこか安全な場所に連れていかなきゃならないし、それからじゃなきゃ考えるものも考えられない。


幸いなことに、ここから車で数分も走れば、ラブホ街が広がっている。



「まずはホテルに入ろう。」


「それってどういうことだよ!
俺、まさか殺されるんじゃ…!」


落ち着いて、ともう一度制し、



「いつまでもここにはいられないし、念のためだよ。」


嘘でもそんな風に言ってやると、春樹は少し迷うような顔をしたが、頷いた。


それを確認してからあたしは、携帯を取り出してタクシーを呼んだ。


こういった場合は、歩くよりそういうものでの移動の方が人目につかないから。