マズイぞ、逃げた方が良い、という少年のような声と共に、ぷつりとそこで録画は終了していた。


あたしは恐る恐る春樹に顔を向けると、



「俺のツレの甲斐くんが、親父がビデオカメラ新調したから持ち出してきたってみんなに自慢してて、盛り上がったやつらが、じゃあ撮影会しようぜ、って言い出して。」


「………」


「俺は面倒だったし、どっちみちバイトあったからそのまま別れたんだけど。」


彼はそこまで言い、唇を震わせた。



「ちょっと前に、ヤバイもんが撮れたって言って、怖ぇから持っててくれて頼まれて。」


春樹のツレの甲斐くんという子も、エンペラーの一員だったことは知っている。


だからもしかしたら、先ほどタカが呼び出されたのだろうか。


だとすると、笑い話なんかでは済まないことになる。


春樹はさらに顔を青くし、



「…一時間くらい前から急に、甲斐くんと連絡が取れなくなってっ…」


「え?」


「高橋とか、奥井とか、タッちゃんとか、みんななんだよ!」


肩を掴まれて揺すられた。


こんなにも怯えるこの子を、あたしは知らない。



「待って、春樹。」


とりあえず落ち着くようにと制してから、



「アンタこの映像が何なのか、わかってる?」


「………」


「これ、堀内組が海外の組織と手を組んでトカレフ密輸した、証拠のビデオなんだよ?」