大声で叫んだと同時に、誰かに口を塞がれ、茂みに押し込められた。


暗がりの中で瞬間に恐怖が体中を駆け巡り、悲鳴を上げようとしたが、



「姉貴、俺だ!」


静かに、と言って人差し指を立て、辺りを警戒する春樹。


散々走って息が上がっているあたしよりずっと、彼はひたいに汗を滲ませながら、荒い呼吸を繰り返していた。


口を塞ぐ春樹の手を振り払い、



「一体何なのよ!」


睨みつけると、誰もいないことを確認した彼は、息をついてその場に崩れ落ちた。


そして、



「実は大変なことになっちまって。」


と、青い顔で唇を噛み締める。


まさか人を殺したとかじゃないだろうけど、その蒼白な様子はただ事ではない。



「これ、見ろよ。」


春樹がごそごそと取り出したのは、ハンディタイプのビデオカメラだった。


それはCMでもやってた最新のもののようだけど。


再生のボタンが押され、小さな画面に何かの映像が流れ始めた。


大分手ブレしていて、わかりずらいそれを覗き込むように観ていると、



「…えっ、嘘でしょ…?」


背景は暗いながらも湾岸地区のどこかで、そこに映るのは大人数の男達。


映像はズームになり、それが何であるかが次第に明確になっていく。



「…これ、まさかっ…」


今日、堀内組が行っていた取り引きの様子――銃の密輸を撮影したものだった。