クラスメイトを一瞥して吐き捨て、梢の腕を引いた。


確かに真面目に勉強しているみんなは立派だと思うけれど、でもあたし達だって懸命なんだ。


ギャルだからとか派手だからとか、そんな境界線で分けられたくなんてないし、同じように必死で自分の生きる道を模索しているのだから。


別棟の校舎まで来たところで、息を吐いた。



「ねぇ、梢。
うちらが変に騒いだら、余計に乃愛が悪く言われるんだよ?」


「じゃあリサは、あのまま黙って聞いてれば良かったって言うの?」


そうではないけれど。


互いに顔を俯かせ、ぐっと唇を噛み締めた時、



「あっ、発見!」


のん気な声に振り返ると、こちらを指差して笑っている直人の姿。


彼はあたし達の方まで歩を進め、



「C組ですげぇ騒いでると思ったら、やーっぱ問題児のお前らか。」


「うるさいわねぇ。」


途端に梢はバツが悪そうな顔に変わる。


どうやら彼女はあれ以来、直人には弱いところがあるらしい。



「ったく、乃愛いなくなったし、こういうことになるんじゃないのかとは思ってたけど、まさかマジで喧嘩するなんて、馬鹿だよなぁ。」


この男は、イエスマンとでもいえば良いか、とにかく物事をオールオッケイだと捉える節がある。


なので乃愛のことだって大賛成だと言っていた。


まぁ、こういう時に緊張感の欠片すらない直人がいてくれて助かったわけだが。



「そうそう、ちょっと説教してやってよ。」