確かにあたし達の道の上には、未来への可能性がたくさんあるのだろうけど。


それでも、決断を下すことに年齢なんて関係ないと、あたしは思う。



「子供を育てるだなんて、自分以外の人生を背負うってことじゃん!」


「じゃあ梢は、もしも直人との子供が出来てたら、簡単に堕ろすだなんて決めるの?」


問うと、彼女は言葉を詰まらせる。



「アンタがアンタなりの考えで乃愛のこと心配してんのはわかるよ。
でもね、本人が決めたんなら、応援してあげるのも“友達”なんじゃない?」


あたしだってこれで良いのかなんてわからない。


けど、否定することで一番傷つくのは、乃愛じゃないか。


少し前のあたしなら、自分には関係のないことだからと心のどこかで思っていただろう。


でも、今は違う。



「うちら、何も出来ないなんてことないよ。
してあげられることはたくさんあるし、梢だってホントはわかってるでしょ?」


「………」


「ほらぁ、アンタが泣いててどうすんのよ!」


無理やり腕を取って立たせると、彼女は消え入りそうな声で、



「ごめん。」


「言う相手が違うでしょ。」


「…うん、そうだね。」


梢は涙でぐちゃぐちゃな顔で、力なく口元を緩めた。


前より少しだけ肌寒くなった風に撫でられる。


あたし自身、不安は数えきれないくらいにあるけれど、でも必死で大丈夫なのだと言い聞かせていたかったのかもしれない。


吐き出した吐息は少しばかり震えていた。