「何でそんな大事なこと、うちらに相談すらなしに決めちゃうのよ!」


梢の怒りはもっともだ。


それでも乃愛は顔色ひとつ変えることはなく、



「言ったら反対してたでしょ?
それにあたしの人生なんだし、誰かが決めるようなことじゃないんだから。」


「でも!」


「ごめんね。」


遮るように乃愛は言う。



「あたしもう迷ってないんだ。」


胸を張って自分の人生を歩もうとしている彼女を、どうやって非難なんか出来るだろう。


けれど梢は悔しさからか唇を噛み締め、その瞳に涙を溜める。



「うちら何にも出来ないわけ?!」


「………」


「相手が何も知らないまま、乃愛だけが子供のこと背負うなんておかしいよ!」


それでも乃愛は、



「先生に迷惑だけは掛けたくないの。
それに堕ろすって選択肢だってあったのに、それを選ばなかったのはあたしだから。」


「今からでも遅くないよ!
堕ろしたら、また前みたいに戻れるでしょ!」


「わかってないよ、梢。
元通りに戻ることなんてひとつもないし、命を消して普通に振る舞うなんて、あたしには出来ない。」


梢の言ってることだってわかるけど、でも乃愛の言っていることだって痛いほどわかる。


顔を俯かせたままのあたしから同意を得ようとした梢に、肩を揺すられた。



「リサも何か言いなよ!」