「子供、出来てるって。」


乃愛の言葉に目を見開いた。



「ちょっ、どういうこと?!」


「だからね、先生との子供、出来てるってこと。」


不倫相手との、子供が出来てる?


頭の中で反復してみたって、ちっともその意味なんて理解出来ない。


なのに乃愛は、



「あたし産むから。」


抑揚なく言葉にした。


まるでそれは、頭を鈍器で殴られたような衝撃で、嘘ばっかりー、なんて笑うことすら忘れてしまう。


ベッドサイトへと腰を降ろした乃愛は、愛しそうにお腹を撫でる。



「今、二ヶ月なんだって。
だから来年の今頃にはもうママなんだよ、あたし。」


「…何、言って…」


困ったように笑顔を零す乃愛は、本当にあたし達の知ってる人なのだろうか。


別人のような彼女を前に、今、現実に起こってることが信じがたく、思考さえも及ばない。



「ちょっと待ってよ、意味わかんない!」


「そうだよ、わかるように説明してよ!」


まくし立てるように言ったあたしと梢に、彼女はため息にも似た息を吐く。



「今後のことはもう決めてるし、ふたりには全部終わってから言うつもりだったんだけど。」