お風呂から出ると、そこにはもう道明さんの姿はなく、タカはひとりでビール片手に深夜番組に興じていた。


そしてあたしに気付くと、まだ湿った髪に触れて笑う。



「さっきの話、俺マジだから。」


さっきの話、というのは、仕事を辞めるとか言っていたことだろうけど。



「急にどうしたの?」


「いや、結構前から思ってたんだ、ホントは。
お前が高校卒業して、その後もずっと一緒にいるにはどうしたら良いだろう、って。」


「………」


「復讐とかそういうのじゃなく、ちゃんと生きるべきなんだって、道明くんからも散々言われてたしさ。」


抱き締められて、唇が触れる。


それは小さな不安さえ消し飛ぶような、ひどく優しいものだった。



「あたしが卒業できなかったらどうすんのよ。」


「え、マジ?」


驚くタカを見て、笑ってしまう。


先のことなんて相変わらず考えてさえいないけど、でも彼のために頑張ることも悪くないのかもしれない、なんて。



「まぁ、卒業できなかったら、その時はその時だ。」


楽観的に言って、タカは肩をすくめて見せた。





あたしの夏休みは、こうやって終わりを告げる。


それからすぐに、テストに模試に授業にと、さらに慌ただしい二学期に突入した。


けれど事件はいつも、あたしの意図しないところでばかり起きている。


どうして気付けなかったんだろうかと、いつも後悔ばかりだよ。