翌日、あたしとタカは、ふたりで誕生日を祝い直した。


夏の終わりの海に行き、まだ残暑と呼ぶには厳しい日差しを浴びて、笑い合った。


街では馬鹿みたいに買い物をして、映画も観たし、水族館にも行ったよね。


それから夜になって合流した道明さんは、「何で俺を呼ばねぇんだよ!」と不貞腐れていたけれど。


とにかく何もかもを忘れたくてはしゃぎまわった一日は、本当に楽しかったという一言に尽きる。


家に帰ったのは、日付も変わろうとしていた頃。








「なぁ、道明くん。
ちょっと話があるんだけど。」


タカはソファーに座って神妙な顔をした。


道明さんは煙草を咥えようとしていた手を止め、「ん?」と首を傾ける。



「俺さ、もう仕事辞めようと思うんだ。」


「………」


「これ以上続ける理由もねぇし、そろそろ潮時だって、今日改めて思ったから。」


タカは膝の上に乗せたシロを撫でながら、でも迷いのない穏やかな口調だった。


隣で聞いていたあたしは目を丸くし、彼らを交互に見る。



「本気なんだな?」


道明さんの確認めいた問いに、



「あぁ、本気だよ。」


本当に足を洗うのだと思うと、あたしの中に、期待にも似た感情が広がった。


笑うタカを見た道明さんは、一瞬考えるように視線を宙へと投げた後で、



「わかったよ、俺に任せろ。」