結局、朝日が昇りきるまであたしと道明さんはリビングで取り留めもない話をしていた。


で、彼はそのまま電話で誰かに呼ばれたようで、出て行ってしまった。


なのであたしは再びタカのベッドに潜り込み、彼を抱き締めてあげる格好で眠りに落ちた。


それから一体何時間が経ったのか、物音がしてまぶたを開けると、



「もうすぐ夕方なんだけど、やっと起きてくれました?」


何故かあたしはタカに抱きつくような格好になっていて、上体だけを起こしている彼は困ったように煙草の煙をくゆらせていた。



「つーかお前さぁ、前から思ってたけど、何で寝てる時いっつも、眉間にシワ寄せてるわけ?」


タカはまるで昨日の出来事が嘘のように、小さく笑う。


そこにはいつものような覇気は見られないけど、でも、あの冷たい瞳なんかじゃない。



「タカ、大丈夫?」


それはまだ寝ぼけ気味の思考のあたしが、やっと聞けた言葉。



「あぁ、ヤクザに毒入りミルク飲まされたこと、心配してくれてるわけ?」


どうやら彼も気付いていたらしい。


だから別にあたしが悪いわけでもないのに曖昧にしか笑えずにいると、



「道明くんは姉ちゃんが死んだあの日から、睡眠薬がねぇと眠れねぇんだとよ。」


「…えっ…」


「あの人はさぁ、何だかんだ他人の心配ばっかして、結局は自分が一番重いもの背負っちまってるって気付いてない大馬鹿なわけ。」


言葉のわりに、悲しそうな瞳。


タカと道明さんは、いつも同じような顔ばかりしている気がする。



「リサ、全部聞いたんだろ?」