「…えっ…」


「まぁ、アイツは自分が生まれてきたこと喜んでねぇから、祝われたくなんかねぇ、って感じなんだけど。」


それでも道明さんが無理やりに時間を作らせ、強引にあたしまで引っ張り出して食事に誘ったらしい。


彼は短くなった煙草の煙を吐き出した。



「タカはさぁ、人のこと恨んでるけど、本当は自分自身の存在が一番許せねぇんだよ。」


「………」


「最愛の姉ちゃんが苦労する羽目になったのは全部自分がいたからだって思い込んでるし、結局は自分を養うためにやってたキャバって仕事の所為でアイは死んだんだ、ってさぁ。」


姉ちゃんが殺されたのは、元を正せば俺の所為だ、とタカが言っていた言葉を思い出した。


だからって、タカが自分の存在を否定してしまったら、アイさんが頑張ってきたことさえ否定することになるじゃないか。



「少し前からアイツ、母親がこっちに戻ってきてるって情報は掴んでたらしいんだけど。
でも、まさか今日見つかるなんて、そりゃねぇだろ、って感じだよな。」


言葉さえも出ない。


けれどこれで本当に、タカの生きる理由はなくなってしまったということだ。



「ねぇ、タカは死んだりしないよね?」


問うたあたしに道明さんは視線を戻し、



「アイツの傍にいてやって。」


と、一言だけ、とても悲しそうな顔で言った。



「支えてやってくれ、なんて言わねぇけどさ、今のアイツにとっては、リサちゃんの存在だけが拠り所なんだろうから。」


きっとタカは、酒でもギャンブルでもクスリでもなく、傍にいてくれる人の存在に依存しているのだろう。


なのにあたしなんかに、一体何が出来るというのか。