思い出してもその時のタカは、何かに取り憑かれているような目をしていたと、道明さんは言う。


誰かを恨むことでのみ、生きる理由を見い出したタカ。



「あの時のタカも17だった。」


当時、中学を卒業して働こうとしていたタカを高校に入学させたのは、アイさんだった。


タカは渋々だが、それでも自分のために身を粉にしてくれる姉のため、問題だけは起こさないようにと努めていた。


が、その意味さえも、もうなくなったから。


タカは高校を辞め、吉岡――アイさんを殺した犯人のことを徹底的に調べ上げた。



「アイツがエンペラーを立ち上げたのもその頃だし、理由はどうあれ生きようとするタカを、俺は止められなかったから。」


そして知った、吉岡の妹の存在。


いや、妹といっても、もう30を迎える普通の主婦だ。


それでもタカは、憎くて堪らない犯人の外堀である、血の繋がりのある人間を壊してやろうとした。



「けど結果としては、吉岡はムショ暮らしの心労や妹の事件が重なって、心不全なんかでコロッと死んじまったんだよ。」


一番復讐してやりたかった人間が、罪を償うことも、ましてやアイさんに対して罪悪感を持つことすらもなく、手の届かない場所で死んだ。


結局、タカの想いは成就されることはなかったということ。


彼はそれからまた半狂乱のようになり、真っ暗闇の中で見つけ出した、次の生きる理由。



「母親が男と蒸発しなきゃ、姉ちゃんはあんなところで働かずに済んだし、おまけに殺されもしなかったはずだ、ってアイツ、こじつけのように言い聞かせてさ。」


だから、そんなに“男”が好きだったんなら、探し出してレイプしてやりゃあ良い。


と、薄笑いを浮かべるタカを止めようとした道明さんだったが、そんな言葉はいつも届かず、アイさんが死んで6年が過ぎた今日。



「何が一番皮肉かってそりゃ、今日がタカの誕生日ってことだ。」