怒声を浴びせられ、タカはずるずるとその場に崩れ落ちた。


まるで茫然自失。


焦点の合わない瞳は誰を見ることもなく、僅かにその肩だけが震えていた。



「アイのためだって言いながら理由付けをして、結果、何になった?
虚しさ以上に、お前は何かを得たのかよ。」


「………」


「なぁ、気持ちはわかるよ?
でもな、こんなことしたって誰も喜ばねぇし、憎しみの連鎖で過去が断ち切れるわけねぇって、わかってんだろ。」


道明さんは諭すように言う。


タカは唇を噛み締め、拳を作った。



「……俺もうわけわかんねぇよっ…」


けれどもそれは、弱々しすぎる言葉だった。


顔を覆ってしまったタカはまるで泣いているかのようで、あたしはそっとその肩に手を掛けた。



「ねぇ、帰ろうよ。」


あたしの手も、タカの肩も震えている。



「お願いだから帰ろう?」


それは懇願に近かったのかもしれない。


無言のままに道明さんが、タカを支えて車の後部座席に押し込んだ。


徐々に公園から遠ざかる車内はやっぱり言葉すらなく、タカは窓に頭を預けたまま、やっぱり虚ろな瞳でどこかを見ていた。


理由なんて知らないけれど、でも憎んでる実の母親を、彼は人に命じてレイプさせたのだ。


まるで何かの糸が切れてしまったかのような夜だった。