たまに見せるその異常な瞳を、今日ほど怖いと感じたことはない。


けれど今度は強く腕を引かれ、身をこわばらせた。



「やめろ、タカ!」


運転席から降りてきた道明さんが制止する。


タカはそれを一瞥するが、でも聞く気はないとまたあたしの腕を引いた。


その態度に、ふざけんな、と吐き捨てた道明さんは、



「いい加減にしろよ!
関係ねぇリサちゃんに当たり散らそうとしてんじゃねぇぞ!」


ガンッ、とその瞬間、タカの体だけがボンネットに叩き付けられる。


彼の体を押さえつけ、胸ぐらを掴んだ道明さんは、



「母親犯して、お前の気は晴れたのか?」


本当に、一体何を言っているのだろう。


未だ茂みの奥から聞こえてくる女の悲鳴が、タカの母親のものだとでも言うのだろうか。


酒の所為でも何でもなく、頭がおかしくなりそうだ。


なのに道明さんは、何も答えないタカに向け、



「吉岡の妹と、自分の実の母親に同じことして、満足したか?」


「………」


「ガキ共使ってやっと、長年夢見た復讐が終わった気分はどうなんだ?」


こんなにもくぐもった声を出す道明さんを、あたしは知らない。


それでも彼はまだタカをボンネットの上で揺らしながら、



「こんなんで本当に満足したのかって聞いてんだよ!」