車は中央公園の入り口付近に止まり、待ってて、とだけ言い残したタカは、険しい顔のままにそれから降りる。


開いた窓から冷たすぎる夜風と共に入ってくるのは、砂埃のような匂い。


数人の男たちの声も聞こえた。


足を押さえろ、とか、写真を撮れ、とか、ギャハハハ、という笑い。


それはまるで、タカと出会ったあの日がフラッシュバックしたかのようで、すっかり酒が抜けきった。


道明さんもまた、運転席で煙草を咥えたっきり、窓の外を眺めている。



「リサちゃん、あんま見ねぇ方が良いぞ。」


「……え?」


「レイプ現場だから、あれ。」


抑揚なく発せられた言葉に、ただ絶句した。


じゃあタカの“復讐”は、誰かをレイプするということ?


瞬間に梢の震えた泣き顔を思い出し、背筋が凍りつく。



「タカが世界で一番憎みながらも、同時に世界で一番恋しかった女だよ。」


その言葉の意味を考えられるほど、思考は正常には働いてなんてくれない。


ただ、男たちの嘲笑の混じる声と、時折かすれたように聞こえてくる女の悲鳴。


堪らなくなり耳を塞いだ。



「まったく、嫌な夜だな。
今日はアイが死んだ日と同じくらいに寒ぃんだから。」


道明さんの呟きが消える。


車の中で震えることしか出来ないでいると、それからしばらくして、ふらふらとした足取りのタカが戻ってきた。


そして後部座席のドアが開けられた瞬間、熱を失った瞳に見下され、あたしは肩を鷲掴むようにしてそこから引きづり降ろされる。



「…ちょっ、痛っ、やだっ…!」