復讐、という単語が脳裏をよぎった。


聞きたくないと思いながら、でも意志とは別に勝手に口が動いてしまう。



「それ、どんな人ですか?」


前のめりに聞いたあたしに驚きながらも結香さんは、



「あたしその時あんまり卓にいなかったからよく聞いてないんだけど。」


そう前置きをした上で、



「随分古い写真だったけど、飲み屋街で見たことないか、って。
結構綺麗な人でね、殺してやりたいくらい愛してる女なんだー、とか、タカさん笑いながら言ってたけどさぁ。」


殺してやりたいくらい愛してる女?


じゃあタカは、その人を見つけ出して復讐をするつもりなのだろうか。



「何だろうね、元カノとか?」


結香さんは茶化すように笑う。


が、あたしは引き攣る口元を上げることだけで精一杯だ。


聞けば聞くほど益々わからなくて、けれどこれ以上は何も得られそうにない。



「なーんて、どうせ堀内組に関連した仕事なんだろうし、リサが気にすることじゃないって。
タカさん、お前らブスと一緒に長々と飲みたくねぇから、って言って、延長しないでさっさと帰っちゃったからね。」


「………」


「まぁ、口悪い人だけどさ、誰にでも優しいどっかの馬鹿よりは良いよ。
だってそれ、リサが家で待ってるからって、恋しがってるわけじゃんか?」


このこのー、と小突かれた。


大切にされているのは痛いほどに伝わってくる。


けど、でも、だからこそ、肝心なことだけ隠されるというのは辛いものだ。