乃愛はネイリストになりたいから専門学校を目指すらしいし、梢は実家の家業である本屋さんを手伝うらしい。


何も決まっていないのは、あたしだけ。


形にならないため息を吐き出しながら、無意味に受けただけの模試の疲労に襲われる。



「ねぇ、リサ大丈夫?」


顔を覗き込まれてはっとした。



「ごめん、何か夏バテなんだよね。」


千田のことは、未だに誰にも話してなんていない。


ふたりはそれぞれの理由でもう悪い遊びからは手を引いたのだし、直人なんかには聞かせられる内容ではないから。


だからあたしは乾いた笑いを浮かべた。



「全然平気っていうか、久しぶりに嫌いな勉強して、疲れが出ちゃっただけ。」


「けど、顔色悪いよ?」


だからって、言えるわけがないじゃないか。



「生理なんだっつーの。」


と、返してから、



「あたし用事あるし、そろそろ帰るね。」


ひとりでファミレスを後にした。


とぼとぼと歩きながら、久々に来ても、相変わらず汚い街だと思った。


だから嫌になるけれど、でもタクシーに乗ることには未だに抵抗がある。


軽い眩暈を覚えそうになり、こめかみを押さえて足を止めた時だった。



「姉貴?」


どうして春樹に会ってしまうのだろう。