「形があるものなんかでお前を縛りたくねぇっつーか。」


「………」


「いや、ホントは俺だけに縋ってれば良いのに、って思うけど、約束ひとつしてやれないヤツが言うなよ、って感じで。」


少し支離滅裂に話す言葉を聞きながら、風に冷やされた首元の鎖の存在感だけが増していく。


けれどその分だけ、繋いだままの手のあたたかさをより感じさせられた。



「何か悔しいな。」


タカは小さく笑ってあたしを見た。



「道明くんにしてやられたっつーか、まさかお前の誕生日に揃いのもの渡されるとは。」


吐く息が、空に滲む。


景色はまるであたし達だけのもののようで、刹那で移りゆく世界を目に焼き付けた。



「あたしには、タカが今この瞬間、隣に立っててくれてるだけで良いの。」


「ごめんな、リサ。」


何に対しての謝罪なのかはわからない。


それでも、謝られた分だけ、幸せが滲んでいきそうで怖かった。



「あたしはずっとタカの傍にいてあげるよ。」


「………」


「例え何があったって、先の保証なんかなかったとしても、それだけは変わらない。」


そっと背中から抱き締められた。


伝わるぬくもりと、朝焼けに彩られた夜明けの世界。


愛しさと悲しさが交錯しながらも、タカのくれた朝日というプレゼントは、人々の希望を照らしているかのようだった。