タカがあたしとの時間を取るために、どれだけ仕事の調整をしているのかくらいは知っている。


だから忘れていたとしても彼を責めようとは思わないし、第一あたし自身、誕生日なんてものに固執してはいないから。



「別にあたしは、普通に今日が過ぎればそれで良かったんだし、気にしないでよ。」


「いや、道明くんがこれ用意してた以上、そういうわけにはいかねぇだろ。」


と、不貞腐れながら言ったタカは、あたしの手にあったネックレスを取り上げた。


そして首に触れる金属の冷たさ。


彼も同じように受け取ったそれを自分の首に装着する。


まさか、この人とのお揃いのものを身に付ける日が来るだなんて思わなかったわけだが。



「うわっ、すっげぇハズい。」


笑ってしまった。


珍しく耳を赤くしたタカはあたしから顔を背け、



「出掛けるぞ。」


「…え?」


「良いから、さっさと準備しろよ。」


こんな時間に?


と、思ったけれど、でも彼はすぐに寝室を後にしてしまい、あたしは頬を膨らませた。


別に余韻に浸りたかったわけでも、愛の言葉が欲しかったわけでもないけれど、それにしても素っ気ないものだ。


真新しい首元の鎖はまだ少し違和感があって、あたしに馴染んでくれてはいない。


ため息を混じらせ、タカの背を追って同じように寝室を出た。