あの日、午前3時を過ぎて帰ってきたタカの手は、赤黒い返り血の色に染まっていた。
それから少しして、道明さんは入れ違うように険しい顔で部屋を出て行ってしまった。
そしてその翌日に見たふたりの車は、新しいものに変わっていた。
だからもしかしたらタカは千田を殺したのかもしれないし、道明さんは事後処理としてその遺体を車ごと海に沈めたのかもしれない。
なんて、想像でしかないのに、考えるだけ思考は悪い方へと向かってしまう。
けれどいつもあたしは臆病だから、真実なんて聞けなかった。
「もう、お前を苦しめるヤツなんていねぇから。」
タカの言葉はたったそれだけ。
彼は気を使ってか、あたしにセックスなんて求めることはなく、でもずっと抱き締めてくれていた。
その腕に今も残されているのは、あたしがつけてしまった傷。
「お前につけられたもんなら、痛みも苦痛も全部受け入れてやる。
だからこのまま一生消えずに俺の中に刻み込まれるなら、それで良いんだ。」
腕を裂く一直線は、あたし達が確かにふたりで過ごした証。
例え愚かな行為だったとしても、そこに口付けを添えたあたしを、タカは笑ってくれたよね。
そして道明さんは、
「飯食えよ。」
と、言いながら、毎日のようにあたしに何かお土産を持ってきてくれた。
甘やかされているだけだとわかっていながらも、あたしはあの部屋の中で、ふたりから与えられる愛や優しさ縋っていたかったのかもしれない。
脳はいつの間にか考えることを放棄していて、ただ、日々だけが過ぎていた。
それから少しして、道明さんは入れ違うように険しい顔で部屋を出て行ってしまった。
そしてその翌日に見たふたりの車は、新しいものに変わっていた。
だからもしかしたらタカは千田を殺したのかもしれないし、道明さんは事後処理としてその遺体を車ごと海に沈めたのかもしれない。
なんて、想像でしかないのに、考えるだけ思考は悪い方へと向かってしまう。
けれどいつもあたしは臆病だから、真実なんて聞けなかった。
「もう、お前を苦しめるヤツなんていねぇから。」
タカの言葉はたったそれだけ。
彼は気を使ってか、あたしにセックスなんて求めることはなく、でもずっと抱き締めてくれていた。
その腕に今も残されているのは、あたしがつけてしまった傷。
「お前につけられたもんなら、痛みも苦痛も全部受け入れてやる。
だからこのまま一生消えずに俺の中に刻み込まれるなら、それで良いんだ。」
腕を裂く一直線は、あたし達が確かにふたりで過ごした証。
例え愚かな行為だったとしても、そこに口付けを添えたあたしを、タカは笑ってくれたよね。
そして道明さんは、
「飯食えよ。」
と、言いながら、毎日のようにあたしに何かお土産を持ってきてくれた。
甘やかされているだけだとわかっていながらも、あたしはあの部屋の中で、ふたりから与えられる愛や優しさ縋っていたかったのかもしれない。
脳はいつの間にか考えることを放棄していて、ただ、日々だけが過ぎていた。