「だってこんなことってないよ!」


喚く乃愛と、泣きじゃくるだけの梢。


あたしと結香さんは顔を俯かせた。


あんな男だとしても、梢は確かに本気なのだと言っていたのにね。


愛も恋も捨てたと言いながら遊んでいたあたし達には、やっぱり幸せなんてものは訪れないのかもしれない。



「梢、とりあえず当分うちに泊まって良いから。」


結香さんは少し悲しそうに言った。



「被害届だって、出すか出さないか、ゆっくり考えれば良いよ。」


梢は僅かに頭を上下させ、頷いた。


アネゴ肌の結香さんの存在が、どれほどあたし達には頼りになっているかなんて、計り知れない。



「結局は女なんて無力なだけなんだね。」


ただ、自嘲気味な乃愛の呟きが消える。


母親のお腹から生まれた頃はみんな同じだったはずなのに、なのにどこから狂ってあたし達は、こんなことを繰り返すようになったのだろう。


人並に誰かに恋をして、付き合って、という頃がもう、思い出せないよ。


それはあたし達だけが悪いのだろうか。


なら、やっぱり生まれてくるべきじゃなかった、ってことだ。


何も言わずにまた顔を俯かせたあたし達に、



「でもね、無力だとしても、死のうだなんて思っちゃダメだよ。」


結香さんの言葉が突き刺さった。



「あたしの友達は、レイプされて、その辛さから精神科に通うようになって、結局は自殺しちゃったの。」