目を見開いたまま、まるであたしは思考が停止してしまったかのようだ。


だから店内の騒喧さえ耳障りなほど、事実を受け入れられずにいた。


乃愛は携帯を握り締めたままガクガクと体を震わせ、結香さんは俯き加減に唇を噛み締める。



「とりあえず行くよ。」


「…結香、さん…」


「良いから早く!」


キーケースを握る結香さんの手もまた、少し震えていた。


あたし達はすぐにファミレスを出て、結香さんの車に乗り込んだ。


どんな状況なのかはわからないけれど、でもレイプがどんなものかくらいは想像に易い。



「梢、パニックになりながら、あっくんに騙された、って。」


乃愛は悔しそうにそう言った。


どうせいつか天罰が下ったって自業自得だ、なんて思っていた昼間の会話を、後悔せずにはいられない。


結香さんはさらにアクセルを踏み込んだ。







梢はスーパーの駐車場の裏手にあるゴミ置き場の近くに、隠れるようにして身を潜めていた。


泣き腫らした顔と、ボロボロの体。


そしてあたし達の顔を見るなり、うわーん、と子供みたいに声を上げた。



「乗りなよ、梢。」


結香さんは自らの車を差す。


あたしと乃愛で彼女を支えるようにして再びそれに乗り込むが、誰も言葉なんて発せない。


嘘であればと、あたしはまだ願っていた。