何もこんな時に説教染みたことなんて言わなくても良いのに。


なのに彼は、まるでわからせるようして、



「窮鼠猫を噛むって言うじゃねぇか。
こんなんじゃザマがねぇ。」


「………」


「大体、闇金なんて上手く立ち回らねぇと、ポリに駆け込まれたら終わりなんだから。」


タカは心底悔しそうに唇を噛み締め、ガッ、と壁を殴る。


道明さんはため息を吐いた。



「お前はこんな世界にしがみついて生きるべきじゃねぇ。」


顔を俯かせたタカに、



「ねぇ、とりあえず手当てしな…」


「触んな!」


刹那、手を振り払われた。


行き場を失くしたあたしのそれは、虚しく宙に残る。



「おい、何もリサちゃんに当たることねぇだろ。」


道明さんは割って入るように制したが、それでもタカは食い下がる。



「俺のこととやかく言う権利、アンタにあんのかよ!」


彼の言葉に道明さんは、舌打ち混じりに顔を逸らし、勝手にしろ、と言って部屋を出た。


タカは壁を伝うようにその場に崩れ落ちる。


戸惑うままにその悲しそうな横顔を見つめていると、



「悪ぃ、マジ。」


タカは漏らすように言って顔を覆った。