ふわふわとした世界の中で、見覚えのある幼い姉弟が、手を繋いで歩いていた。


あぁ、あれは昔のあたしと春樹じゃないか。


膝小僧に擦り傷を作った程度でメソメソ泣くあたしと、その手を引く春樹。


いつもみんなの輪に入れず、可愛いお洋服を汚したくなかったあたしとは対照的に、ガキ大将だった春樹は、



「おねえちゃんはドジだなぁ。」


と、言って、笑って慰めてくれていたね。


そういえば、どっちが年上かわからないとよく言われていたっけ。


あの頃はこんなにも仲良しだったのに。


春樹は自慢の弟だったはずなのに。


なのに、どうして狂ってしまったのだろう。


どうしてこんな風に――








「リサ!」


ゆっくりと目を開けた時、誰かの腕の中にいることに気がついた。


だから虚ろな瞳を動かせば、そこにはタカの顔があって、驚いてしまう。


あたし、生きてたのか。



「しっかりしろよ、馬鹿野郎!」


言葉に反し、泣きそうなタカの声は弱々しい。


何もかもが散乱した部屋の中で、あたしは彼によって抱き締められていた。



「…タ、カ…」