結局は空気の悪さに耐え兼ね、ため息混じりに教室を出た。


すると友達といた乃愛があたしに気付き、声を掛けてきた。



「リサ、さっき梢と何かド派手な言い争いしてなかった?」


廊下まで聞こえていたのか。


別に言い争いという程でもないが、頭の痛さにこめかみを押さえながらも、曖昧な顔でしか笑えない。


乃愛はくるくると巻いた髪をいじりながら、



「まぁ、梢は否定されると余計に意固地になっちゃうタイプだからねぇ。」


まるで他人事と言った風だ。


そして、



「直人が可哀想になっちゃう。」


と付け加え、わざとらしく肩をすくめて見せた。


アンタだって不倫相手の奥さんの方がよっぽど可哀想だよ、とは返さないけれど。


普通の愛や恋を見失ったあたし達には、もう戻れない道があるのかもしれない。



「乃愛こそ最近はド派手な噂がないね。」


だから嫌味混じりに言ってやると、



「けど、虚しいことに変わりはないよ。」


ぽつりと漏らされた、そんな台詞。


乃愛だってもしかしたら、どれほど相手を想おうとも、最後は報われないとわかっているのだろう。


本気になった相手とのことを素直に喜べないなんて、あたし達は揃ってダメダメだ。


互いにため息を吐き出さずにはいられない。