表情がないというか、まるで殺意さえ帯びたその瞳。


タカは地面に伏した男に馬乗るような格好になり、その胸ぐらを掴み上げる。



「どこの馬の骨か知らねぇけど、あんま俺のこと怒らせんじゃねぇぞ。」


言った瞬間、彼は拳を振り落とした。


ガッ、ガッ、と規則的に繰り返される鈍い音と、うめき声。


男の顔も、タカの拳も、夜の闇でもはっきりとわかるほどに血に染まっていた。


だからあたしは止めに入ることすらも出来ないまま。


何度目かの後、手を止めたタカは、



「地元歩けなくなっても後悔すんなよ?」


そう言って目を細め、鈍色の輝きを取り出してから、男の太ももにそれ突き刺した。


グサッ、と湿り気のある音が響く。


躊躇いすらもなく、それは一直線に振り降ろされた。


ぎゃあ、と猫の尾を踏んだような叫びは、男のもの。


彼は血がだくだくと溢れる足を押さえながら、地面でのたうつように体をくねらせる。



「…やめっ、悪かっ、助けてくださっ…」


男の懇願は、だけどもタカには通じない。


ボタリ、ボタリ、と赤く染まったナイフからは鮮血が滴る。



「お前、“雷帝”って名前くらい聞き覚えあんだろ?」


タカが見降ろした瞬間、男は先ほどよりももっと顔を青くした。



「なぁ、死に急いでんなら殺してやるよ。」