「お母さんと遼くんは?」


「今、ちょっと出掛けてる。帰ってきたら、ご馳走を見せてビックリさせようと思ってね」


お父さんはそう言うと、年甲斐もなく顔をクシャクシャにして笑う。


その笑顔はとても温かい。


だけど、目じりのシワも増えたし、最近では白髪も目立つようになった。


毎日遅くまで仕事をして疲れているはずなのに、どんな時でも笑顔を絶やさないお父さん。


血の繋がらないあたしにまで、すごく優しくしてくれる。


その度に、罪悪感という感情がこみ上げてきて苦しくなる。


あたしがいなければ、お父さんとお母さんと遼くんの3人で楽しく暮らしていけたのに。



「あたし、部屋行くね」



胃の奥がズキッと痛む。


あたしはお父さんに微笑みかけると、痛む胃にそっと手を当てて、自分の部屋に飛び込んだ。