「木下くんは、デートどうだった?」

「えっ?」

 充は思わず手に持っていたメニューを落としてしまった。

 慌てて拾い、店員の呼び出しボタンを押す。

「どうって、別に、普通だよ」

「ふーん。普通か」

 直後やってきた店員に、ビールのおかわりといくつかの料理を注文する。

 この間のことを、桃香はどう思っているのか。

 充にはさっぱりわからない。

 いや、むしろ何とも思っていないのではないだろうか。

 今こうして食事をしているのと、何ら変わりがないように思っているのではないだろうか。

 それほどに、桃香は普通なのだ。