入ったのは桃香の自宅の最寄り駅近くにある、小さな居酒屋だった。

 二人はテーブルの席で、とりあえずつまみとビールを嗜む。

 ジョッキを半分くらい空けて、桃香はぽつりと話し出した。

「あの日……、木下くんが帰ってから。あたしね、またお墓に行ったのよ」

 何ともリアクションしづらい話題だ。

「ああ、そうなの?」

「そう。彼に報告しに行ったの」

「報告って……。つまり、俺とやったことを?」

「うん。生き返ってくれないから浮気しちゃったって」

 浮気という表現が引っかかる。

 彼はもう死んだのに、浮気。

 新たな恋愛だとは見なしてくれないのか。