それだけを告げて、席へと戻る。

 桃香の反応なんて、見たくはなかった。

「あたしも」

 と返ってこないのはわかっていたから。

 どうせなら、気楽にいこう。

 気を回さねばいけないことは、もっと他にたくさんあるのだ。

「木下ぁ!」

 今日もニラミを効かせている、あのハゲ課長とか……。



 この日の夕方、連休明けということもあって、充はいつもより早く退社することができた。

 まだまだ残暑が厳しい。

 シャワーでも浴びてスッキリしたい。

 バッグに忍ばせてあるタオルで首元の汗を拭っていると、誰かが背中にポンポンと触れた。