あー、情けねえ。

 何なんだこのモヤモヤは。

 充は自分を奮い立たせ、席に戻った桃香に近づく。

 モヤモヤの原因はわかっているけれど、拭い去ることができない。

「池田さん」

 桃香がこちらを向き、首を傾げる。

「なに?」

 充は右足に力を入れてバリアの中に進入する。

「大したことじゃないんだけどさ」

 そして内緒話をするように、桃香の斜め後ろに立ち、体を屈めて口を耳元に持っていった。

 桃香も応えるように耳を充に向ける。

「俺、やっぱ池田さんのこと好きだから」