オフィスに戻ると、桃香も出社していた。

「あ、おはよう」

 いつも通りの桃香の笑顔。

「おう、おはよ」

「ねえねえ、連休前にもらった美容室の原稿なんだけど。写真もう一枚くらい増やせないかな?」

「あ、ああ。いけると思う」

 いつも通りの仕事の会話。

 数日前のことが嘘のように、桃香はいつも通りだった。

 充はあの日を意識してドギマギしてしまう自分が情けなくなった。

 さらに桃香には亡くなった彼の霊が憑いているような気がして、見えないバリアみたいなものを感じた。

 あの日はそんなもの、なかったのに。