桃香の部屋に泊まったあの日、桃香には全く迷いがないようだった。

 充のイメージでは、婚約者が亡くなった女は

「彼以外愛せないの」

 とか何とか言って、貞操を守るものだと思っていたのに。

 予想を大きく裏切って、むしろ期待以上に、桃香は積極的だった。

 しかしそれは、充に愛情があったからというわけでは、決してない。

 吹っ切れているというか、割り切っているというか……。

 もしかしたら、穴を埋めるように、かもしれない。

 恋に落ちた女との一晩が今となっては、虚しく感じたりもしている。