「何かあったろ」

 やはりこの男、侮れない。

 顔に出ているのか。

「別に、何もないっす」

 桃香とのことを話す気にはなれなかった。

 沢田がどれだけ桃香のことを知っているのかわからないし、ここで話すにはあまりにもヘビーだ。

 付き合っているわけでもない。

 付き合えるような気もしない。

 亡くなった婚約者がライバルですと言ったところで、画期的なアドバイスがもらえるということもないだろう。

 この時点で充は、桃香とのこれ以上の進展を諦めているのだ。