「その子、きっと木下くんのために昨日のうちから着るものを選んだり、メイクの仕方を考えたり、ネイルを塗り直したりしてるんだからね」

 うぅ……。

 桃香の言葉が充に突き刺さる。

「ダメ。ドタキャンは絶対ダメ」

「ご、ごめんなさい……」

「ちゃんと行くのよ」

「はい、了解っす」

 昨日の余韻に二人で浸っていたい充であったが、ここまで言われては諦めざるを得ない。

 抱いた女にそんな説教をされたのは初めてだった。

 それでも、昨日はあんなにも弱っていた桃香が説教するまで元気になった。

 良しとするか。