充はその男にすがり付く桃香の目を覚まそうと、かける言葉を探す。
男に捨てられても信じて思い続ける桃香。
半年も帰らない寂しさからヤケになって、他の男で心の穴を埋めようとした。
充の中ではそのようなシナリオになっていた。
しかし。
それはただの推測に過ぎなかった。
「帰ってきたくても、来れないの」
桃香の声が詰まる。
「絶対絶対、帰ってこれないの」
充の憶測は揺らぎ、代わりにそれまで想像もしなかった新しい考えが芽生える。
「仕方ないじゃない」
そしてそれが……
「死んじゃったんだもん」
事実だったりもする。