無理……?

 充の視界がぐらつく。

「どうして? 別れた男なんて引きずっても……」

「別れてない」

「え?」

 いるような、いないような。

 このフレーズが頭を掠める。

「いなくなっただけ」

 桃香を捨てたってことじゃないか。

 事故を起こした彼女から、逃げたってことじゃないか。

「いなくなった? それって相手は別れたつもりなんじゃないの?」

「ちがう」

「でも帰ってこないんだろ?」

「ちがうの」

 否定するなよ。

 出ていった男より、俺のことを見てくれよ。