桃香はハッとした表情をこちらに向ける。

「俺だって今朝まで別の女といたわけだし、偉そうには言えないけど。でも、池田さんを同じようにはできないよ」

 充は桃香がもっと悪い女なら良かったと思っているが、桃香もまた、充がもっと悪い男なら良かったと思っていることだろう。

 充自身、自分はもっといい加減な男だと思っていた。

 なのに桃香の事となると、器用にコトを運べない。

「ごめんなさい」

 ぽつりと桃香が謝罪した。

「あたしちょっとだけ、冷静になってきた」

「うん」

 充は再び桃香を抱きしめて、頭を撫でた。