しかし、充はその領域に踏み込むことができなかった。

 頬を腫らした桃香が痛々しくて、何かすると壊れてしまいそうで。

 桃香にとって、これは自暴自棄の所業ではないだろうか。

 そんな考えも浮かぶ。

 充の温もりを求めていたとして、それが充を愛していることにはならない。

 桃香から愛情のようなものは感じられなかった。

 デートの時だってそうだ。

 桃香はいつも心が別のところに向いていて、充の気持ちに応えようとは思いもしないのだから。

 男である充が冷静にそう判断できたのは、ついさっきまでヒカリと遊んでいたからかもしれない。