充はテーブルの向かいまで行き、肘をついて小さくなっている桃香を、後ろから包み込んだ。

 ふわっとシャンプーの香りがした。

 髪がやや湿っている。

 風呂に入って間もないらしい。

「一緒にいるよ」

 抱きしめた彼女の肩は小さく、少しだけ震えていた。

 腕に力を加えると、抗わずに立ち上がる。

 桃香はゆっくり充の方を向いて、彼の背に腕を回した。

 グスッと鼻をすする音が聞こえて、背中でクシャッとシャツを掴む感覚がした。

 頭を撫でるように優しく胸に押し付ける。

 直後、桃香は静かに嗚咽を漏らし始めた――……。