桃香がこちらを向いた。

「ねぇ」

 少し遠慮がちに呼び掛ける。

「なに?」

「こんなことあたしが聞くのもアレなんだけど、デートしてたんじゃないの?」

 ギクッ!

 なぜそれを?

「そんな顔しなくてもいいじゃない」

 充の顔が引きつったことを桃香は見逃さない。

 女のカンは鋭いというが、ここまでとは。

「何でそんなことわかるの? って顔してるね」

「はは、敵わないなぁ」

 ズバズバと心中を暴かれる充には、笑うしかできなかった。

「簡単なことよ。車の助手席、女物の香水の匂いがしたの」