充は桃香の腕を掴んだまま、彼女をかばうようにして歩き出す。

 桃香は抗わない。

 そしてまだ少し冷気の残っている車の助手席に乗せた。

 顔は伏せたまま。

「何買うの? 俺、買ってくるから」

 エンジンをかけながらそう聞くと、

「飲み物」

 と呟く。

「他には? お菓子とか、食べ物とか」

「食欲、ない」

「……わかった」

 運転席のドアを閉め、再び店舗に入る。

 飲み物コーナーにたどり着くと、心臓がバクバク鳴っていることに気付いた。

 好きな女の痛々しい姿は、ショックが強すぎたのだ。